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益田ミリ さんの記事

イラストレーター。著書に「昨日うまれた切ない恋は」(メディアファクトリー)「お母さんという女」(光文社)など。ただ今、全国をひとり旅実施中。
「47都道府県ひとりで行ってみよう」http://www2.odn.ne.jp/47todoufuken/

VOL1.ラスベガスの巻

Vol. 007 海外の穴 益田ミリ

vol007_guest_kaigai.jpg「わーっホタル!きれーい」

ゴールデンウィークに行ったラスベガス。夜空一面にホタルが舞い、それはそれは幻想的だった。こんな砂漠にもホタルがいるんだぁ。うっとりしていると、顔面になにかが激突してきた。あわてて地面にたたき落とす。巨大な蛾だった。わたしがホタルだと思っていたのは、ラスベガスのネオンに照らされていた無数の「蛾」だったのである。

夜空いっぱい蛾、蛾、蛾。ブラックライトをあびた蛾たちが得意げにバタバタやっている。砂漠中の蛾が、光りを求めて全員集合しているのだ。やめてってば!!はっきりいって、こんなことガイドブックには書いてなかった。カジノ、グルメ、ショッピング。素敵な夜がわたしを待っていると思っていたのに。いざ行ってみりゃ、蛾は顔面に体当たり。

ホテルの部屋に戻れば、窓の隙間から入って来た蛾と格闘。ラスベガスで、ティッシュ片手に蛾と戦う32歳の独身女。みじめとはこういう時に使う言葉なんだろう。カジノでも負けたしね。

VOL2.バリの巻

Vol. 008 海外の穴 益田ミリ

vol008_guest_kaigai.jpg日本では他人の持ち物の値段を聞くのは、はしたないことのようになっている。どうしても値段を知りたい時も、できるだけ失礼のないようにするのがマナーである。「ええ時計してはりますなぁ」「イヤーたいしたことないですわ」「またまたー」「イヤイヤー」「高いんでしょうねぇ。わたしらなんか手でえへんのと違いますぅ?」と、まだまだつづきそうなんでやめとくけど、とにかく値段を聞き出すまでに時間がかかる。

ところがである。この前、バリに行ったわたしは、バリ人があけっぴろげに値段を聞いてくるのに驚いた。たとえば土産物屋で買い物をしていると、「その服いくら?(バリ語だけどなんとなくわかる)」と店員さんがわたしの着ているもんの値段をたずねてくるのだ。しかも唐突に。その時計は? そのサンダルは? つぎつぎに値段を聞かれる。わたしが答えると「ふーん」という感じで特に反応もない。ただ知りたいだけなのだ。知りたいから、聞くだけ。なんとシンプルな。いいねぇ。

VOL3.タイの巻

Vol. 009 海外の穴 益田ミリ

vol009_guest_kaigai.jpgとにかく外国の人たちって、あんまり謙遜しない気がする。この前タイに行った時もそうだった。現地を案内してくれたガイドさんは言う。「タイの国はのんびりとしています。人もほがらかです。日本人はセカセカした人が多いです」。ま、そりゃ事実なんだけどさー、もうちょっとほがらかな言い方があるような。その後も、なにかっつーと、タイの人々の「のんびり、ゆったり、ほがらか」をアピール。日本人はせっかちな人が多いと気の毒がってくれていた。確かに、タイの人々は笑顔がほがらかで、ゆったりしている気がする。だからって、その度に日本と比較するなっつーの!!

しかし、そのわりに、わたしが屋台で偽者のロレックスを買おうか迷っていた時、ガイドさんはこんなことを言ってきた。「安いし買ったら? あなた、5千円札持ってたでしょ」。5千円札持ってたでしょ? ってアンタ、いつチェックしてたわけ? のんびりどころか、超するどいよ!!。忍者も顔負けの早業ですってば。

VOL4.スペインの巻

Vol. 010 海外の穴 益田ミリ

vol010_guest_kaigai.jpg友達とスペイン旅行をしたのは3年前のこと。深夜1時を過ぎてようやくマドリードのホテルに到着ところ、ホテル側の手違いで予約が取り消されていた。現地の日本人ガイドが言う。「心配ないわ。ここと同等クラスのホテルをすぐ用意するから」。そう言って連行されたホテルは超オンボロ級。翌日、わたしたちはミスをしたほうのホテルに怒鳴り込みである。スペイン人の支配人を呼び出し、夕べのホテルは同等クラスじゃなかったと抗議。「おわびにフラメンコショーを無料で見せろ!」と詰め寄ったのである。気迫負けしたのか、支配人はディナー付フラメンコショーを無料で手配してくれたのであった。

さて、この話はここからが重要だ。実はわたしたちとスペイン人の支配人は、まったく英語が話せなかった。上記のやりとりは、全部ジェスチャーだったのだ。「フラメンコ無料で見せろ!」も当然ジェスチャー・・・。遠い異国の地で、文字どおりカラダを張って戦ったわたしたち。日本人をナメんなよ!

VOL5.グランドキャニオンの巻

Vol. 011 海外の穴 益田ミリ

vol011_guest_kaigai.jpgラスベガスからグランドキャニオンに向う飛行機は8人乗りほどの超小型セスナだった。塔乗手続きの時、受付の人に塔乗者全員が体重を聞かれる。なんでだろうと不思議だったが、飛行機の左右を同じ重さにしないと平行に飛ばないからということだった。なんだか単純すぎる感じが恐い……。

で、いざ塔乗し、わたしはさらに怖くなった。なんとわたしと同じくらいの体重とされている隣の人が、どう見てもわたしより太めだったからである。「あたしゃ、この人と同じ体重か?」。つっこみたかったが、すでにセスナは離陸。砂漠の上空に勢いよく飛び上がっていた。

窓の外には壮大な景色が広がっていて、みんな写真を撮って盛り上がっていた。素晴らしい景色である。わくわくする眺めである。しかしわたしの心は今ひとつスッキリとしない。なんで平行に飛でるねん!! ものすごいバランス良く飛んでいるセスナに、ちょっとムカつく乙女心なのであった。


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